職業としてのイタコは可能か

休学している人間のほとんどにとって、何者でもない現在は人生の落丁である。自分もこの極めて直線的な人生でとうとう落丁を迎えたかと思ってかなりワクワクしたのだけど、結局代わりにやっている仕事が楽しくてベタな人生が続いてしまっている、それは文化財の修復である。

正確に言うと正確なことは言ってはいけないのだが、大まかに考えると文化財の修復になる。しかし即物的な真正性は相対的に重要ではないので実際の工程は新規製作か再現が半分くらい、というか我々もそもそも文化財は専門ではない訳で調査考証設計製作が渾然一体となった中世的アマチュアリズムに回帰してしまっているところもある、製作はもちろん自分たちには出来ないのだが。とにかく作者がボスの大ボスみたいな人なので転がり込んできたラッキー仕事みたいな感じ、さすがに志願した。本来なら9月から留学なのでちょうど半年だけ関わる予定だったのだが、もう完全にこの仕事しかやっていない。つまり今は亡き作家の意図を汲みながらの製作復元の部分もあり、保存の部分もあり、その統合を考える部分もあり、つまりイタコ芸である。

 

こうして落丁した人生の半年間で何をやっていたかと言うと正直にいってあまり生産的だったとは言い難い。そもそも生産的であろうと思ったこともないわけだけど、特に今月はヤバかった。一冊も読んでないし映画もあまり観ていない。単に死者を降して線を引いていただけ、あと8ヶ月で修論を書く必要があるけれど全く手をつけていない。かなりまずいと思う。

ところで移築って英語でなんて言うんだ?